事業承継対策の基本的な考え方|準備が早ければ早いほど効果が高

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事業承継対策の基本的な考え方|準備が早ければ早いほど効果が高い?

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事業承継とは、会社経営者が後継者に事業を引き継ぐことを言い、経営者の加齢や死亡(相続)によって直面せざるを得ない会社のターニングポイントのひとつです。

 

事業承継の際には、経営者が生きている間には贈与税または所得税・消費税が、死亡している場合は相続税が、それぞれ後継者にかかってくることになりますので、早い段階から将来を見据えた事業承継対策を練っておいたほうが節税につながる可能性が高くなります。

 

今回は、自営業者や中小企業の経営者に適した事業承継について、考慮すべき税金やどういった対策が有効なのかを検討していきたいと思います。

 

 【目次】
事業承継対策はいつから始めるべきか
事業承継の際にかかる税金とは
事業承継対策の基本的な考え方
事業承継対策として役に立つものは何か
生命保険
不動産の評価額の見直し
会社の資産を減らす方法
まとめ

 

事業承継対策はいつから始めるべきか

事業承継対策はいつから始めるのが良いのかという疑問はよく耳にしますが、結論から言えば「早ければ早いほどいい」ことになります。

 

というのも、事業承継をするには後継者を決定し、その後継者が事業承継にかかる税金を支払える土壌を整えることが大切なのですが、この準備を一切しないで急に事業承継が発生すると、せっかくの事業が傾いてしまうおそれがあるのです。

 

また、現在の経営者自身が若く健康であっても、いずれは老いて現役を退くことになりますし、その過程で認知症などを患ってしまうと円滑な事業承継は期待できなくなってしまいます。

 

そういった意味でも、事業承継対策は早いうちから練り始めたほうが確実かつ節税などの効果も期待できます。

 

まずは、事業承継にかかる税金と、事業承継対策の基本的な考え方をご紹介いたします。

 

事業承継の際にかかる税金とは

事業承継の際にかかる税金は、承継の時期によって若干変わってきます。すなわち、経営者が生きている間に承継する場合には「贈与税」または「所得税・消費税」が、経営者が亡くなった後で承継する場合には「相続税」が、それぞれ問題になるといえます。

 

なお、経営者が他の会社に事業を承継する場合(株式譲渡や事業譲渡の場合)には「所得税」や「法人税」等が問題になりますが、今回は経営者から後継者への事業承継を想定して贈与税と相続税を中心に解説していきたいと思います。

 

生前の事業承継にかかる税金:贈与税または所得税

現経営者が生きている間に後継者に事業承継をする場合には、主に次のような税金が発生します。

事業承継の内容

現経営者にかかる税金

後継者にかかる税金

法人事業の事業承継

売買

所得税・消費税

特になし

贈与

特になし

贈与税

個人事業の事業承継

廃業にかかる税金

  • 所得税
  • 課税事業者の場合は消費税

開業にかかる税金

  • 所得税
  • 消費税(事業開始から2年間は免税)

 

法人事業の事業承継は、現経営者が後継者に事業を売却する「売買」による承継の場合と、現経営者が後継者に事業や会社の株式を譲渡する「贈与」による承継の場合が考えられます。

 

このとき、売買による事業承継は、売買代金を受け取った現経営者に対して所得税(および消費税)が課税され、後継者には特に税金が発生しません。これに対して贈与による事業承継は、贈与を受けた後継者に対して贈与税が課税され、現経営者には特に税金が発生しないという違いがあります。

 

また、個人事業の事業承継の場合は、現経営者が廃業⇒後継者が開業という流れで手続きを行うことから、双方に所得税(および消費税)が課税されることになります。

 

贈与税は基礎控除後の課税価格に応じて10%~55%と高い税率が課されるため、会社の資産が絡んで金額が大きくなることが予想される事業承継では、贈与税の特例が設けられています(事業承継税制)。

 

死後の事業承継にかかる税金:相続税

現経営者が亡くなった際に事業承継を行う場合、後継者には相続税が課税されます。

 

現経営者にかかる税金

後継者にかかる税金

法人事業の事業承継

特になし

相続税

個人事業の事業承継

相続税は現経営者の相続人に対して課される税金ではありますが、後継者が相続人以外の人の場合でも、相続によって財産(=事業)を取得した人ということで課税対象になります。そして、現経営者の死亡までの期間の所得税に関しても、準確定申告を行う必要があります。

 

相続税も10%~55%の税率となっており(※ただし贈与税とは課税標準や控除が異なります)、相続人以外の人は2割加算がなされるため、一般的には高額になる傾向があると言えます。そこで、贈与税と同じように、事業承継にかかる相続税にも特例が設けられています(事業承継税制)。

 

事業承継税制とは

事業承継税制とは、「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予及び免除の特例」の通称で、その名の通り平成27年1月1日以後に相続・遺贈・贈与によって取得した非上場株式等に課税される相続税または贈与税が猶予・免除されるという特例のことをいいます。

 

事業承継税制の大きな特徴としては、会社・経営者・後継者の3者がそれぞれ要件を満たすと、後継者の取得した株式にかかる贈与税の100%(相続税の80%)が猶予されることが挙げられます。

 

ただし、この特例が利用できるのは発行済議決権株式総数の2/3に達するまでの部分とされていますから、例えば後継者が全株式を取得した場合には、特例はその株式の2/3の80%(ないし100%)に適用でき、残りの1/3については通常の課税が行われるということができます。

 

このように、事業承継の際には大きな節税効果が見込める事業承継税制を活用するのがおすすめではあります。しかし、適用には一定の条件を満たすことが要求されること、やや複雑な計算・手続きになることから、税理士等の専門家に相談したほうが簡単かもしれません。

 

 

事業承継対策の基本的な考え方

事業承継対策として考慮すべきは、次の5つのポイントです。

 

①後継者の選定

中小企業の事業承継において真っ先に問題になるのが「後継者」の選定です。

 

中小企業の多くは後継者問題を抱えており、承継に至らず廃業を選択するケースも少なくありません。

 

子どもに事業を継ぐ意思がなかったり、外部で後継者を探すことが難しい企業では、業績が良くても廃業を余儀なくされてしまう場合があり、早い段階から後継者を探す必要性が高まっています。

 

②後継者による経営権の掌握

後継者が現経営者の身内であり、ある程度事業に精通している場合にはそこまで苦労しないかもしれませんが、後継者による経営権の掌握についての配慮も大切です。

 

後継者教育を充分に行って社員や取引先からの信頼を集めるとともに、現経営者の有するノウハウまでを含めて事業承継を行うと、承継後の事業への影響が少なく、後継者の会社支配権も確立されたものになるでしょう。

 

③相続問題への対策

後継者を親族以外から迎え入れる場合には、後継者に選ばれなかった家族に対する相続問題も考慮に入れなければなりません。

 

②とも関連しますが、後継者になれなかった家族への充分な財産配分を行って争続を回避することや、相続税の納税資金を工面する方法を準備するなど、相続時に事業が混乱しないような対策を練っておく必要があります。

 

④自社株対策

自社株の評価が高ければ高いほど課税される税金も高くなることから、事業承継前には自社株の評価を下げる方法を検討する必要があります。

 

事業承継税制を利用すれば100%納税猶予されるのでは?と思われるかもしれませんが、猶予=支払わなければならない可能性があるということと、利用自体が少し複雑なので、事業承継税制を利用する場合であっても自社株対策は必須です。

 

⑤納税資金の調達・確保

贈与や相続によって事業承継を行う場合には、後継者がどういった方法で資金を集めて納税するかまでを見据えて事業承継を行うことが大切です。

 

売買によって事業承継を行えば課税されるのは現経営者だけということになりますが、事業を買い取るだけの資金がやはり問題になりますので、いずれにせよ資金調達・確保については充分な検討が必要と言えるでしょう。

 

事業承継対策として役に立つものは何か

以上が事業承継とその対策の基本的な考え方になりますが、ここからは具体的にどういった方法が事業承継に役立つのかをご紹介していきたいと思います。

 

生命保険

事業承継対策といえば生命保険と言われるように、非常にポピュラーな手段が「生命保険の活用」です。

 

生命保険のうち、逓増定期保険・長期平準定期保険という種類の保険に加入すると、保険料の1/2を損金算入できるというメリットがあります。これらの保険は満期保険金がない代わりに支払うべき保険料が平均化されており、保険期間が長いという特徴がありますが、保険期間の前半に支払う保険料の中に前払保険料が含まれることから、保険料が高額になる傾向があります。

 

対象となる逓増定期保険・長期平準定期保険は、契約者が法人・被保険者が役員または使用人(およびこれらの人の親族)です。

 

区分

前払期間

損金算入可能額

長期平準定期保険

保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険加時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるもの

保険期間開始時から当該保険期間の60%に相当する期間

支払保険料の1/2に相当する金額

逓増定期保険

① 保険期間満了時における被保険者の年齢が45歳を超えるもので②③に該当するものを除いたもの

支払保険料の1/2に相当する金額

② 保険期間満了時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険加入時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が95を超えるもの

支払保険料の1/3に相当する金額

③ 保険期間満了時における被保険者の年齢が80歳を超え、かつ、当該保険加入時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が120を超えるもの

支払保険料の1/4に相当する金額

 

支払保険料を損金算入できるということは、会社の利益を圧縮することができるということで、要は株価を下げるのに一役買ってくれるということです。ただし、これらの保険は保険料がかなり高額になりますから、経営悪化に繋がるリスクもあり、慎重な利用が求められる部分でもあります。

 

不動産の評価額の見直し

不動産の評価は3年に1度見直しが行われることから、帳簿上の価格と実際の評価額が乖離している可能性があります。直近では平成27年に評価替え(評価の見直し)がなされており、次回は平成30年、33年と評価替えがされる予定です。

 

もちろん、大幅に土地の価格が変わる際には1年ごとに評価の見直しがなされることになりますが、長年使用していなかった土地などに関しては、事業承継前に評価額を確認することが大切です。

 

例えば、3,000万円で購入した土地が今では6,000万円に高騰していたり、逆に1,000万円ほどに下落している可能性があります。

 

資産が高騰していればその分贈与税などが高くなりますし、下落していれば売却することで損金を発生させることができるので、現時点で活用していない土地については承継前の評価確認がおすすめです。

 

また、土地の地目(種類)によっても評価が大きく変わる可能性がある点にも留意しましょう。分かりやすい例を挙げれば、市街化調整区域と市街化区域では評価方法が異なりますし、前者の場合は地目変更が原則としてできないため、後者に比べて評価額が2~3割安くなる傾向にあります。

 

市街化調整区域内の土地については、活用が難しく評価が低いのが通常ですが、農地を潰して駐車場として利用している場合など評価の間違いを起こしやすいケースも多いので、不動産についての特例の利用の可否を含めて税理士などに相談してみるのがおすすめです。

 

会社の資産を減らす方法

事業承継では、大抵の場合で後継者側に税金が課されることになりますから、課税標準となる事業自体の評価を下げることが一番の事業承継対策になります。

 

とはいえ、単純に会社の資産を減らすことが推奨されるわけではなく、会社の利益を下げたり、自社株の評価を下げることで事業の評価額を下げるというのが重要なポイントです。

 

自社株評価の下げ方

自社株評価を下げるには、先に述べた生命保険を活用したり、設備の減価償却を計上したり、新たに不動産を購入するといった方法が考えられますが、シンプルなのは「退職金を活用する」ことかと思います。

 

役員への退職金の支払いは、多くの場合でまとまった金額になるうえ、会社の利益を圧縮する効果を持ちます。その結果、自社株評価を下げることができますから、適正な範囲で算出した退職金をしっかり支払うことは大切です。

 

退職金の具体的な額については、一般的に【退職時点の月額役員報酬×在任年数×功績倍率】という計算式で考えられており、あまりに過大な報酬による損金計上の悪用を制限しています。

 

そうは言っても、その役員が事業に大きく貢献した結果、退職金額が大きくなる分には、認められる範囲での退職金と言うことができますから、この場合は適正額として多額の退職金を支払うことが可能と言えるでしょう。

 

損金に算入できるものは?

自社株評価に関連しますが、損金が大きくなれば会社の利益も圧縮されますから、どういったものが損金に算入できるかもきちんと押さえておくほうが無難です。

 

損金に算入できるものとしては、

  • 役員報酬、役員の退職金
  • 法人生命保険の掛金の一部
  • 1人5,000円までの会議費
  • 企業共済の一定の掛金
  • 一定の企業における一定の交際費
  • 社員へのボーナス

などが考えられますが、中小企業の場合には特に「交際費」と「企業共済の一定の掛金」にも留意しておくと良いかと思います。

 

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

 

事業承継対策は、早ければ早いほど高い効果が期待できますので、経営者の引退というマイナスイメージに躊躇せず、少しずつでも準備を始めていただくのが良いかと思います。

 

本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。

編集部

本記事は相続税相談ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続税相談ナビに掲載される記事は税理士が執筆したものではありません。  本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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